「最後の瞬間を諦めず」「奥行横断歩道」

「最後の瞬間を諦めず」
京都競馬場のゴール前を駆け抜ける馬たちのスピード感を、そのまま空気ごと閉じ込めたような写真です。被写体である競走馬と騎手は大きく流れ、輪郭さえ曖昧になるほどのブレが残されていますが、そのブレこそが“瞬間の速さ”を雄弁に語っています。背景にあるゴール板やスタンドの装飾はしっかりと写り込み、動と静の対比が強調されているのも印象的です。馬体が伸びきり、騎手が前傾姿勢で体を預ける様子を見ると、勝負の緊張感がこちらにまで伝わってくるようです。色を排したモノクロ表現により、余計な情報がそぎ落とされ、純粋に“速度”と“競争”だけが残る構図になっています。肉眼では捉えられない一瞬を、写真ならではの視点で見せてくれる作品だと言えるでしょう。この刹那のドラマをどう切り取るかによって、競馬というスポーツの奥深さを改めて感じさせてくれる一枚です。

「奥行横断歩道」
都市の日常が持つ独特のリズムが静かに流れています。横断歩道の手前で立ち止まる人物の姿は、まるで時間が一瞬止まったかのような落ち着きを感じさせます。その一方で、視界を横切るバイクは動きの軌跡を残し、街に脈打つスピードや忙しさを象徴しているようです。アーケードの奥に続く人々のシルエットは、生活の気配を柔らかく漂わせ、写真全体に奥行きを与えています。光と影のコントラストが美しく、特に地面に落ちる影はリズム良く並び、都会の日常に潜む秩序や美しさを引き立てています。色が排されたことで、視線は自然と構図と光へ向かい、ストリートスナップならではの“何気ない瞬間のドラマ”が際立つ一枚に仕上がっています。通り過ぎる人、待つ人、走る乗り物──それぞれが織りなす都市の時間の重なりを切り取った、味わい深い作品です。

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