「階段」「扉」

「階段」
金属製の階段を撮るのは、モノクロを続けているからかもしれません。無機質な素材に光が当たると、黒から白へと滑らかに移り変わるトーンが現れ、そのグラデーションの美しさに惹かれます。

色のない世界では、質感や形のわずかな違いがより際立ち、鉄の冷たさや空気の硬さまで写り込むようです。階段のリズムや影の繰り返しは、単なる構造物でありながら抽象的な模様のようにも見え、見るたびに新しい発見があります。

モノクロ写真の魅力は、現実を少し遠ざけながらも、そこに確かにある「形の詩」を描けるところにあるのかもしれません。
【撮影環境】
カメラ:SIGMA fp
ISO感度:100
シャッタースピード:1/800秒

「扉」
レンガの壁に埋め込まれた無機質な扉。そこに行き止まりの気配を感じる。
ドアの向こうに何があるのか、想像することはできても、実際に進むことはできない。その閉ざされた空間が、この街の中にある「過去」と「未来」の境界を思わせる。

いつかこの建物も姿を消すのだと聞いた。そうしてまた新しい風景が生まれ、少しずつ街は形を変えていく。モノクロの世界で見ると、時間の流れはより静かに、確かに感じられる。

光と影の境目に立ちながら、今という瞬間だけが確かに存在しているように思えた。
【撮影環境】
カメラ:SIGMA fp
ISO感度:100
シャッタースピード:1/200秒

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