「彫刻の世界」
白い彫像が空へと伸ばした腕先には、一羽の鳥が羽ばたこうとしている。今回の写真は、その力強い瞬間をモノクロで切り取った一枚だ。正面ではなく、あえて斜めからの構図にすることで、彫像の存在感と、その背後に落ちる影のドラマ性が際立っている。特に、壁面に伸びた大きな影は、彫像そのもの以上に物語を語りかけてくるようだ。光が当たる実体と、影として広がるもう一つの姿。この対比が、まるで希望と葛藤、人間の内なる二面性を象徴しているようにも感じられる。
また、彫像の滑らかな質感と、壁のタイル状の硬質な質感がぶつかり合い、写真全体にリズムを生み出している。モノクロだからこそ光と影の境界が強調され、視覚的なインパクトが増しているのも特徴だ。静止しているはずの彫像が、今まさに鳥を空へ解き放とうと動き出す瞬間を捉えたような、不思議な躍動感がある。見れば見るほど想像が広がる、そんな一枚になった。
「鉄塔」
街中を歩いていると、ふと見上げた先に巨大な鉄塔がそびえ立っていた。今回の一枚は、その圧倒的な存在感をモノクロで切り取ったものだ。写真の構図では、手前に伸びる電柱や電線が複雑なラインを描き、奥にある鉄塔の規則的な構造と対照的な表情を見せてくれる。無数の線が交差し、絡み合うように広がっていくその姿は、一見すると無機質だが、街の営みを支える確かな生命線を感じさせる。
特にモノクロで撮影したことで、光が当たった鉄塔の金属部分が白く浮かび上がり、影となった部分とのコントラストがより強調されている。電柱の重厚さと鉄塔の軽やかな格子構造が、互いを引き立てながら画面の中で独自のリズムを奏でているのも印象的だ。空を切り裂くように高く伸びる鉄塔は、どこか未来的でありながらも、この街の長い歴史の中に静かに存在してきた時間を感じさせる。
何気ない日常の風景も、視点を変えて見上げるだけで、まるで別世界のように映る。今回の写真は、そんな“日常の中の非日常”を捉えた一枚になった。
