「窓の在り方」
このモノクロームの一枚は、ある集合住宅の壁面を、まるで幾何学模様のように捉えたスナップです。
画面全体が、窓とバルコニーによって作り出された完璧なグリッド(格子)で構成されています。一つとして同じ形や配置の窓はなく、すべてが等間隔で垂直・水平に並ぶ様子は、現代都市が求める効率性と秩序を象徴しているかのようです。
外壁のざらりとしたテクスチャと、バルコニーの金属製の手すり、そして窓ガラスの滑らかな表面。素材の違いが生み出すコントラストが、強い日差しが生み出す影によってさらに強調され、立体的なリズムを生み出しています。特に、窓のひさしやバルコニーの底面が落とす鋭い影は、光の向きと強さを雄弁に語り、写真に緊張感を与えています。
この規則正しいフレームの中には、カーテン越しに透けて見える人々の生活が詰まっています。カーテンの閉まり具合、窓の開け方、部屋の明暗。外から見ればすべてが同じ「箱」かもしれませんが、それぞれの窓の奥には、笑い声や悩み、そして家族のドラマが存在する、唯一無二の日常があります。
モノクロームという手法が、この建物の建築的な骨格と機能美を際立たせています。同じ形が反復される中にも、光の角度や影の長さによって常に変化が生まれる。この繰り返しの中に潜む、**「差異」と「普遍」**の美しさを、この建物の壁面から感じ取ることができます。都市生活の美学は、こうした規則的な構造の中にこそ見出せるのかもしれません。
【撮影】
カメラ:FUJIFILM GFX50S II
設定:ISO160 1/200秒
レンズ:不明
「かべ」
ある現代建築の外壁を、徹底的にクローズアップして撮影したものです。
画面全体が、斜めにカットされた板状のパネルが規則正しく、かつリズミカルに反復するパターンで埋め尽くされています。この反復が生み出す、強い幾何学的な美しさと、錯視のような視覚効果が、この写真の最大の魅力です。
パネルは、角度によって光を反射する部分と、影の中に沈む部分に明確に分かれ、この構造に深い奥行きを与えています。斜めのラインが連続することで、まるで無限に続く都市の迷路や、どこまでも続く構造体のグリッドを覗き込んでいるような感覚に陥ります。
よく見ると、パネルの暗い部分には、小さな穿孔(穴)が施されており、その細かなディテールが、この建物の設計が単なる装飾ではなく、採光や通風といった機能性に基づいていることを示唆しています。また、パネルの奥の隙間には、わずかに植栽の緑が覗いており、無機質な構造体の中に、意図的に「生命」を差し込む現代建築の哲学を感じ取ることができます。
モノクロームのトーンは、この外壁が持つ素材感と立体感を最大限に引き出しています。それは、人間の論理と技術が極限まで洗練された結果として生まれた、都市の抽象芸術です。歩きながら見上げる一瞬の光景が、こんなにも複雑で、見る者の意識を深く捉える力を持っていることに、改めて感動を覚える一枚です。
【撮影】
カメラ:FUJIFILM GFX50S II
設定:ISO1600 1/800秒
レンズ:不明
